2013年にデザイナーのJimmyさんと一二三さん、喬宇さんの三名により設立されたファッションブランド TRAN 泉。TRAN の洋服はどれも無駄を省いたミニマルなデザインが特徴です。台北市臥龍街にある白と黒を基調としたシンプルな店内で、デザイナーのJimmy さんと一二三さんにこだわりのファッションやライフスタイルについてお話を伺いました。
ブランドネーム「泉」の由来を教えてください。
Jimmy:漢字一文字のブランドネームにしようと三人で話していたのですが、最初に思いついたのは、龍や虎のような子供っぽい名前ばかりでした。お店が臥龍街にあったことと喬宇が当時読んでいた神話に登場する富をもたらすキャラクター「泉龍」からインスパイアされて、龍じゃなければ泉にしよう!と思ったんです。「泉」という字は、豊かさや柔軟さ、完ぺきさを象徴しています。形を持たない点も、私たちのブランドのコンセプトにぴったりだと思いました。泉に湧く水のように生活に流れ込み、既存のルールに縛られることなく自由な発想でコーディネートできるスタイルを提唱しています。
インスピレーションはどこから湧いてくるのでしょうか?
一二三:私は、山本耀司などの敬愛するデザイナーからインスピレーションを探しています。彼のデザインは、優雅で落ち着いていてとても好きです。
Jimmy:以前はよくファッションショーからインスピレーションを探していましたが、最近は Instagram から若い斬新な発想のデザイナーを発掘しています。 Instagram では、それぞれが四角い枠の中でセンスを発揮していて素晴らしいですね。他には、東区の街頭で道行く人のコーデを観察したり。流行の移り変わりがとても速いので、最近のトレンドがよく分かります。
性別を問わないユニセックスなデザインが特徴のTRAN の洋服。実際に、男女のモデルの洋服をコーディネートしている様子を見せていただきました。
台湾のファッション業界に過剰な装飾のデザインが氾濫しているのは、なぜだと思いますか?
一二三:街でもステージ衣装のような洋服をよく見かけますし、台湾の美術教育に関係しているのではないかと思います。それから、台湾では生地の選択肢が限られています。特殊な生地が入手しにくいことも洋服のデザインに間接的に影響しているのかもしれません。
Jimmy:ブランドを設立した年、「私は個人的にシンプルな洋服が好きだけど、どうして誰も作らないんだろう?」と考えていました。でも多くの人が「Less is more(少ないほど豊かである)」という時、必ずしもそうではないと思うんです。単に少ないというだけでは何も得られないこともありますから。たくさんある状態から余分なものをそぎ落としていく過程を経てこそ、真の「Less is more」にたどり着けるのではないでしょうか。
心地よい暮らしとは、どんな生活だと思いますか?
Jimmy:私にとって生活とは、つまり家や住みかのことです。個人的には、寝室に洋服を無造作に脱ぎ散らかした生活感にあふれた暮らしよりも、生活感を感じさせない暮らしが好きですね。私は寝室の整理整頓は毎週欠かしませんし、断捨離という考え方にも非常に共感しています。モノゴトの価値を見極めて丁寧に選び取ることが、心地よい暮らしだと思っています。
現在流行しているミニマルライフについてどうお考えですか?
Jimmy:「ミニマル」と「倹約」とは別物だと考えています。例えば、シャツの袖口がほころびているのに新しい服を買わないという考え方には同意しかねます。私は10日に一回髪を切ったり、仕事の時はいつも黒い服を着たりしています。黒い服を着るのは、一種の儀式ですね。それに汗をかきやすいので…。あとは、ちょっと神経質なんですが、洋服は粘着クリーナーで汚れを取ってからしか着ません。これが私にとってのミニマルライフです。
Pinkoiと他の通販サイトとの違いについて教えてください。
よい商品を厳選していること、そしてブランドイメージの構築に成功している点です。
Jimmy:Pinkoi でショップを運営している営業スタッフに勧められて、私たちもショップをオープンしました。Pinkoi利用後は売り上げもアップしましたし、よい商品が厳選されている点がとても気に入っています。例えば、他の通販サイトで自転車を買おうとした場合、検索結果にタイヤが出てくることがあるんです。関係のない検索結果が表示されると、ほしい商品が見つからず消費者にとって不便ですよね。Pinkoi は、巨大なセレクトショップのようです。他にも、セールスをしないという点にもポテンシャルを感じています。セールスは値下げ競争を招くからです。
「ファッション」を派手でお金がかかると考える人もいれば、誰でも気軽に実践できるという考え方もあります。お二人が考える「ファッション」について教えてください。
一二三:私はファッションとは、一種のライフスタイルだと考えています。デザインには実験的なところがありますから、流行の有名ブランドが高価であっても理にかなっていると思います。新しい生地や作り方を試すこともコストに含まれているんです。でも洋服の選択肢は無限にあるので、誰もが自由に価格を選んで購入することも可能です。
Jimmy:丁寧な暮らし、例えば映画を観たり、音楽を聴いたり、食事したりすることなど自分でしっかりと考えて選択すること、モノゴトの背景にある意味を考えることさえもファッションであると思います。
ブランド設立を考えている人にアドバイスはありますか?
Jimmy:とにかくまず一通りやってみましょう!自分の現状と目標を明確にした上で、需要があると確信できれば、きっと上手くいくのではないでしょうか。
一二三:ブランド設立当初は、漠然とファッションを生業にして暮らすことしか決めていませんでした。実際は、洋服を作るだけでなく商品写真の撮影や販売をして初めて完成するんですよね。きちんと計画を立てずに創業することだけを目的にするなら、失敗する確率も高くなるでしょう。起業するのもタイミングなので、少しずつ経験を積んでいけば自然と機が熟すばずです!
TRAN 泉
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テキスト: Ayumi